クリスマスローズ エリックスミシー
咲き始めは白っぽく、だんだん色づいてきます。

 

「イエスが生誕された時、お祝いのプレぜントをしたくてもできない、ある貧しい信仰心の篤い少女のもとに天使が舞い降り、クリスマスローズの花を咲かせました。そして、少女はその花束を主イエスに捧げました。」
そんな美しい物語さえも知らずに、去年の秋、たまたま足助でクリスマスローズの苗を購入したのですが、これが育つでもなく、枯れるでもなくずっとそのままの状態。これでいいのかなとずっと気になっていたのですが、つい先日、NHKの「趣味の園芸」でクリスマスローズの育て方を放送していました。番組に出演していた「HELLEBORUS倶楽部」代表の野々口稔氏が、この花は水はけの良い土で育ててあげて下さいと言っているのを聞いて、改めてうちの鉢を見ると、どう見ても水はけがいいとは言いがたい状態。先生は8種類もの土を混合して使っているそうですが、さすがにそこまでは無理としても、もう少しなんとかしようと思い、「うもーりー」へ土を買いに行くことにしました。
お店に着いてとりあえず土を買って、オーナーさんに色々話を伺うと、このクリスマスローズ、本当に奥が深いようです。中でも、興味深かったのは、同じ種から育てたものでも、一つとして同じ花(と言ってもこれは実際には花ではなくガクなのですが)が咲かないということ。オーナーさんが面白い表現をしていたので引用させてもらいますが、似ているけどちょっとずつ違う、いとこみたいなものだそうです。
そして、苗は花が咲くまでに2〜3年もかかるそう。育てる楽しみが欲しい私は、花を買う時、できるだけ小さな苗を買うのですが、クリスマスローズに限っては、咲いてみないとどんな花か分からないので、苗より花を見て選ぶ方がいいそうです。それを聞いたら何だか無性に一鉢欲しくなり、横好きとああでもないこうでもないとかなりの時間をかけて選んだのがエリックスミシーという品種。他にも魅力的な花はたくさんありましたが、梅にちょっと似ていて和の雰囲気を持ったこの花に惹かれて決めました。


品種によって花だけでなく葉の形も違います。


うもーりーで買った
エリックスミシー


幸田憩の農園でも¥298の
苗をつい・・種類はオリエンタリス


足助のは不明

結局、私も花を買ってしまいましたが、先日と同じく、今日も来ていたお客さんたちは、みんな何鉢もの花を購入していました。会計場所から聞こえてくる金額は1万円以上が当たり前。横好きが「とても花屋で聞く金額とは思えない」と言っていましたが、いくら庭があっても、同じ花ばかりたくさん買ってどうするんだろうと思ったら、クリスマスローズに嵌っている人たちの多くは、この花だけを育てているのだそうです。夏、花のない時間をじっと耐え、ただひたすら冬に咲くこの花を待つ。その一瞬の為の花を選ぶのですから、その姿は皆、真剣そのもの。うつむき加減に咲く花を、一つ一つ丁寧に覗き込み、選んだ花は他のどれよりもいとおしいものとなるのです。
私の前にレジで会計をしていたご夫婦も、奥さんがこの花に嵌っているとかで何鉢ものクリスマスローズを購入されていましたが、本当に幸福そうでした。そして、それを眺めるご主人も何だか嬉しそうで、奥さんの趣味を暖かく見守っている様子が伺え、見ているだけでほのぼのとした気持ちになりました。このクリスマスローズ、どうやら人を幸せにする力があるようです。
余談ですが、育て方を知りたかったので、野々口稔氏の「クリスマスローズ」という本も買ったのですが、今、うもーりーに並んでいるものは氏のサイン入りでした。ちょっと得した気分です。
* HELLEBORUS ヘレボルス=欧米でのこの花の総称。日本ではクリスマスローズと呼ぶのが一般的。

文 縦好き 06.2.18現在


HOME CONTENTS